Subject   : tRNA(トランスファーRNA)

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 tRNA(トランスファーRNA)
 tRNA(トランスファーRNA)は、タンパク質を合成する翻訳の際に、特定のアミノ酸をリボソーム内部へと導入するRNAである。74-93塩基からなる短いRNA鎖である。アミノ酸結合部位と、mRNAのコドンと水素結合を作るためのアンチコドン部位を持つ。非コードRNAの一種である。転移RNAとか運搬RNAとも言われる。 通常76-90ヌクレオチド(真核生物の場合)のRNAからなるアダプター分子であり、遺伝情報を含むmRNAとタンパク質のアミノ酸配列とを物理的に結びつける役割を担う。運搬RNA、トランスファーRNAとも呼ばれ、通常tRNAと略記される。かつてはsRNA(soluble RNA)と呼ばれていた。tRNAは、細胞内のリボソームというタンパク質合成機械にアミノ酸を運ぶことでこれを行う。伝令RNA(メッセンジャーRNA、mRNA)上の3ヌクレオチドコドンと、tRNA上の3ヌクレオチドアンチコドンの相補的な関係が、mRNA上のコードに基づくタンパク質の合成に結びつく。このように、tRNAは、遺伝暗号に従って新しいタンパク質を生物学的に合成する翻訳に欠かせない要素である。

mRNA上に示されたヌクレオチド配列は、そのmRNAに転写された遺伝子のタンパク質産物にどのアミノ酸が組み込まれるかを特定する。これに対し、tRNAの役割は、遺伝暗号のどの配列がどのアミノ酸に対応するかを特定することである。mRNAは、一連の連続したコドンとしてタンパク質をコード化し、それぞれのコドンは特定のtRNAによって識別される。tRNAの一端は、アンチコドンという3ヌクレオチド配列による遺伝暗号に一致する。このアンチコドンは、タンパク質生合成の際に、mRNA上のコドンと相補的な3塩基対を形成する。

tRNAのもう一方の端には、アンチコドン配列に対応するアミノ酸が共有結合している。個々の種類のtRNA分子は、それぞれ1種類のアミノ酸にしか結合できないため、各々の生物は多くの種類のtRNAを持っている。遺伝暗号には同じアミノ酸を指定する複数のコドンがあるため、同じアミノ酸を運ぶのにもかかわらず異なるアンチコドンを持つ異なるtRNA分子が存在する。

tRNAの3'末端への共有結合は、アミノアシルtRNA合成酵素と呼ばれる酵素によって触媒される。タンパク質合成の際、アミノ酸が結合したtRNAは、伸長因子と呼ばれるタンパク質によってリボソームに運ばれる。伸長因子は、tRNAとリボソームの結合、新しいポリペプチドの合成、およびmRNAに沿ったリボソームのトランスロケーション(転移)を助ける。tRNAのアンチコドンがmRNAと一致すると、すでにリボソームに結合している別のtRNAが、成長中のポリペプチド鎖を自身の3'末端から、新たに運ばれたtRNAの3'末端に結合したアミノ酸に転移させ、リボソームがこの反応を触媒する。tRNA分子内に含まれる多数のヌクレオチド(塩基)は化学修飾(英語版)を受ける(修飾塩基)。メチル化や脱アミノなどがよく見られるほか、二重結合の還元やアミノ酸の付加、硫黄化など多くの修飾が存在する。それぞれの修飾塩基は、tRNAの適切な高次構造の安定化や、アミノアシルtRNA合成酵素の認識の変更、アンチコドンにおいて塩基対合の特性を変化させる役割などtRNAの機能を整える重要な働きをしている。

<出典:Wikipedia>

 ■ 修飾塩基
 tRNA全体のいくつかの位置には、特にメチル化(例: tRNA(グアニン-N7)-)-メチルトランスフェラーゼによる)によって修飾された塩基が存在する。最初のアンチコドン塩基、すなわち「ゆらぎ位置(wobble-position)」は、イノシン(アデニン由来)、キューオシン(グアニン由来)、ウリジン-5-オキシ酢酸(ウラシル由来)、5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン(ウラシル由来)、ライシジン(シトシン由来)に修飾されることがある。
 ⇒ RNA(Ribonucleic acid)の種類

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