Subject   : 抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体(抗ARS抗体)

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体(抗ARS抗体)
 抗ARS抗体は、アミノアシルtRNA合成酵素(Aminoacyl-tRNA Synthetase:ARS)に対する抗体であり、筋力低下を主な症状とする原因不明の多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)の患者血清中に、存在することが知られています。

抗ARS抗体には数種類の自己抗体が同定されており、本検査は抗Jo-1抗体を含む5種類の抗ARS抗体を一括して検出致します。

骨格筋に特異的な自己抗体8種のうち、5種類を網羅的に測定する検査である。抗Jo-1抗体を含み、PM/DMの25〜30 %で陽性を示す。  抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体は、アミノ酸とそれに対するtRNAの結合を触媒する酵素群であり、それぞれのアミノ酸に対し約20種類のARSが知られている。

 多発性筋炎(polymyositis:PM)は、自己免疫疾患のひとつで、主に体幹や四肢の近位筋(大腿、上腕など)を中心に、慢性に進行する筋力低下と筋委縮を来す難病である。PMに皮疹を伴う病態を特に皮膚筋炎(dermatomyositis:DM)と呼ぶ。本邦の統計では全国に約2万人のPM/DM患者がおり、男女比は約1:3で、中年以降の女性に多い疾患である。

 PM/DMに認められる自己抗体としては、筋炎特異的自己抗体(MSA)と、他の自己免疫疾患でもみられる筋炎関連自己抗体(MAA)が知られている。このうちMSAには多くの種類があり、本項目である抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体はそのうちのひとつである。

 古くからPM/DMの血中マーカーとして知られる抗Jo-1抗体は、ヒスチジルtRNA合成酵素を認識する抗体であり、抗ARS抗体の一種と考えることができる。

 抗ARS抗体陽性患者では、抗合成酵素抗体症候群(ASS)あるいは抗ARS抗体症候群という、特徴的な症候群を呈する。筋炎の他に間質性肺炎を高頻度に合併し、慢性化しやすいことでも知られ、レイノー現象や多発関節炎、手指の特異的な変形を伴うなど特徴的な身体的症状が報告されている。

 現在、抗ARS抗体には8種類が知られており、本検査はEIA法によりそのうち5種類、抗Jo-1、抗PL-7、抗PL-12、抗EJ、抗KS抗体を網羅的に検出するものである。個々の抗体を個別に定量することはできない。残りの3つの抗体である抗OJ、抗Ha(抗YRS)、抗Zo抗体は報告例がほとんどないなどの理由で、本検査には含まれていない。

<出典:日本リウマチ学会>

 ■ 異常値
 多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)
 ⇒ 抗原と抗体

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