Subject   : 薬の投与法1

カテゴリー  : 学術情報 > 薬学


 薬の投与法1
薬はいくつかの経路で体内に導入されます。これらの経路には、口から服用するもの(経口)、静脈(静脈内投与)や、筋肉(筋肉内投与)、脊髄(せきずい)の周りのスペース(髄腔内投与)、皮膚の下(皮下投与)に注射するもの、さらには舌の下に置くもの(舌下投与)、直腸(経直腸投与)や腟(ちつ:経腟投与)に挿入するもの、眼に注ぐもの(点眼)、鼻の中に噴霧して鼻粘膜を通して吸収するもの(経鼻)、口から肺に吸いこむもの(吸入)、局所的または全身的な効果を得るため皮膚に塗るもの(経皮投与)、貼り薬から皮膚を通じて体全体に運ばれ効果を示すもの(経皮的吸収)などがあります。各投与経路にはそれぞれ固有の目的やメリット、デメリットがあります。

 ■ 経口ルート 
経口は最も便利な上に、通常は最も安全で費用もかからないため、いちばんよく使われている投与法です。ただし、薬が消化管を通ることによる制約もあります。経口投与された薬は、通常は口から胃を通過して、多くが小腸で吸収されます。そして、血流に乗ってその標的部位に運ばれる前に、腸壁と肝臓を通ります。多くの薬は腸壁と肝臓で化学的に変化するので(代謝)、血流に到達したときは量が少なくなっています。そのため、直接血液中に注射する方法(静脈内投与)で同じ効果を得るための投与量は、しばしば少なくなります。
経口投与では、消化管内の食べものや他の薬の存在によって、薬の吸収量や吸収速度が左右されることがあります。そのため、空腹時に服用する薬、食後に服用する薬、特定の他の薬と併用してはいけない薬、経口投与できない薬などに分けられることになります。
経口薬の中には消化管を刺激するものもあります。たとえば、アスピリンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の多くは、胃や小腸の内膜を傷つけることがあり、潰瘍を起こしたり、すでにある潰瘍を悪化させたりします。このほか、消化管で吸収されにくいものや不安定なもの、胃酸や胃の消化酵素で破壊される薬もあります。
経口ルートが使えないときは、他の経路を使います。これには、口から何も食べられないとき、薬を素早く投与しなければならないとき、正確な用量あるいは非常に高用量で投与しなければならないとき、消化管から吸収されにくい薬や吸収が不安定な薬を使うとき、などが挙げられます。

 ■ 注射ルート 
注射による投与(非経口的投与)には、皮下、筋肉内、静脈内、髄腔内に注射する方法があります。注射用製剤の製造や調剤のしかたによって、注射部位からの薬の吸収を数時間、数日、あるいはそれ以上長く持続させることもできます。このような製剤は吸収が速い製剤のように何度も投与する必要はありません。

 ■ 舌下ルート 
薬を舌の下に置く方法(舌下投与)で、薬は舌の下にある小血管から直接吸収されます。舌下投与は、狭心症(心筋への血液供給が不足するために生じる胸痛の発作)の緩和に使用されるニトログリセリンにとりわけ適しています。薬の吸収が速く、腸壁と肝臓を経由せずにすぐ血流に入るからです。しかしながら、ほとんどの薬では不完全あるいは不安定な形で吸収されるため、この方法は使えません。

 ■ 直腸ルート 
経口で投与する薬の多くは、座薬として直腸から投与することもできます。薬を水溶液、または薬を油性物質と混合して液化させた状態で、直腸に挿入します。直腸の壁は薄くて血液供給が豊富なので、薬はすぐに吸収されます。座薬は、吐き気や嚥下(えんげ)困難があったり、外科手術後の食事制限のために、薬を内服できない人たちなどに必要に応じて処方されます。座薬にすると刺激性がある薬は、注射で投与しなければなりません。
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