Subject  : 脳しんとうと脳挫傷

カテゴリー: 健康・医療情報 


 脳しんとう
脳しんとうは、頭部外傷後の短時間の意識消失で、身体的損傷はみられないものを指します。

脳しんとうは一時的な脳の機能不全の結果ですが、体には損傷部分が見あたりません。軽い頭部外傷であっても、頭蓋内で脳が揺れる程度によっては脳しんとうが起こります。
脳しんとうが起こると、一時的に放心状態になったり、軽い錯乱状態になったりします。外傷を受ける直前や直後のことは、覚えていないでしょう。ほとんどの人は、数時間から数日で完全に回復します。一部の人、特に高齢者は最初の外傷を受けた後、数時間から数日にもわたって脳機能が悪化し続けることがあります。その場合には、緊急に治療が必要です。

脳しんとう後症候群は、脳しんとうを起こした後に現れる一連の症状です。数日から数週間続きますが、それ以上長びくことはめったにありません。患者は幾分錯乱気味で、頭痛を伴い、異常な眠気を感じます。めまい、集中力の低下、もの忘れ、うつ状態、感覚や情動の欠如、不安感なども現れます。症状が現れている間は、仕事も、勉強も、人付き合いもうまくいかなくなります。脳しんとう後症候群が、軽症の頭部外傷後によく起こる理由については不明です。

重大な損傷が起きていないと診断されれば、治療はまったく必要ありません。症状が悪化していなければ、痛み止めにはアセトアミノフェンが使用されます。成人で、外傷が重症ではなくCT検査で出血がないと確認されれば、外傷の3?4日後にアスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬(痛み: 非ステロイド性抗炎症薬を参照)が与えられます。薬をもっと早くから使用しないのは、これらの薬には血液凝固を阻害する作用があり、血管が傷ついている場合は出血が長びくためです。
 脳挫傷
脳挫傷とは、頭部への直接的な強打などによる脳の打撲状態を指します。脳裂傷とは脳組織が断裂した状態を指し、多くが眼に見える頭の傷と頭蓋骨骨折を伴います。

脳挫傷と脳裂傷は、脳しんとうよりも重症です。脳挫傷は、強く殴られた場合のような衝撃によって、突然脳が加速されたり、頭が動いているときに固定したものにぶつかって急に減速されることによって起こります。脳は衝撃を受けた側と、頭蓋内の反対側の部位にダメージを受けます。加速と減速による外傷は「クー」と「コントルクー」とも呼ばれます(フランス語で打撃とカウンターの意味)。
脳挫傷と脳裂傷は、脳の物理的なダメージは最小でも起こることがあり、ほとんど症状が現れません。しかし脳の腫れと出血がひどいときには、激しい頭痛、めまい、嘔吐が起こります。一方の瞳孔が他方よりも大きくなることもあります。脳の損傷を受けた領域に応じて、思考能力、感情の調節、運動、感覚、言語、視力、聴力、記憶などに障害が現れます。患者はイライラして落ち着かなくなり、興奮するでしょう。体の片側の筋力が低下し、しびれを感じます。錯乱も現れるでしょう。より重症の外傷の場合は、脳の内部で腫れが起こり組織の損傷が広がります。脳ヘルニアを生じて、昏睡状態に陥ることもあります。重症の脳損傷の多くが、特に頭皮損傷、頭蓋骨骨折、胸部と脊椎の損傷を伴います。

脳の物理的損傷を発見するためにMRI検査が行われます。出血が少ない場合は安静にしているだけですみますが、数日から1週間は経過を観察しなければなりません。出血が多い場合は、血液を外科的に取り除く必要があります。ほかにも外傷があれば、そちらの治療も必要です。
 ⇒ 脳出血

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