Subject   : ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori)

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 ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori)
2〜3×0.45μmの細菌で、数本のしっぽがあります。 このしっぽをヘリコプターのように回転させて移動することから、ヘリコバクター・ピロリ(正式名 Helicobacter pylori)と名付けられました。
たとえ感染しても大半は病気にはならず、また生活環境の進歩、生活習慣の変化とともにこの菌を持っている人は減少しているのです。しかし、ゴキブリがピロリ菌を運んでいる可能性が指摘されていますので、小さな子供のいる家庭では、台所を清潔に保ち、ゴキブリの駆除を心がけることが大切です。

 胃の中はpH1〜2と非常に酸性が強く、生物が生きていけるような環境ではありません。しかし、この細菌はウレアーゼという酵素を多量に持っており、これを使って胃の中にある尿素をアンモニアに変化させます。このアンモニアが胃酸を中和し菌の周囲のpHを変化させて、生存できる環境を作り上げているのです。いわゆるバリヤーを張っていると考えてください。このように非常に進化した細菌なのです。ただし、胃がんの所や十二指腸のような尿素のない所では生きていけません。

ウレアーゼは胃の組織に障害を与えます。それ以外にもこの菌は熱ショックタンパク(heat shock protein、HSP)、空砲化毒素、ムチナーゼ、プロテアーゼなどを持っており、それぞれが複雑にからみ合って病気の発生や進行に関係すると言われています。特に、空砲化毒素は潰瘍の発生に大きく関与しているとされています。

ヘリコバクター・ピロリの感染は、慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のみならず、胃癌やMALTリンパ腫などの発生につながることが報告されている。
感染巣の部分で、ヘリコバクター・ピロリが作るさまざまな分解酵素の働きによって粘液層が破壊され、粘膜による保護を失った上皮細胞が傷害されて炎症がおきる。また菌が分泌するVacAなどの毒素やIV型分泌装置で上皮細胞に注入するCagAなどのエフェクター分子による上皮細胞の直接的な傷害や、細菌の感染に対して動員された好中球などの白血球による組織傷害なども加わって、炎症を増悪させる。

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