Subject   : 光の散乱

カテゴリー  : 光学 


 光の散乱
 半導体のフォノンやエキシトン、分子結晶の分子内・分子間振動など、物質中にはさま ざまな素励起が存在している。それらは固有の振動数を持ち、その振動数に応じた光を散 乱したり吸収したりする。したがって光の吸収や散乱を調べることにより物質中の素励起 について知ることができる。巨視的な観点から見ると、一般に光の散乱は誘電率(テンソル) の実部の素励起あるいは緩和過程による時間的・空間的な変調によって生じる。一方、光 の吸収は誘電率の虚部に対応しており、その吸収スペクトルはやはり素励起の共鳴周波数、 あるいは緩和時間に依存している。入射する光によって媒質の光学的特性が変化しない場 合、すなわち線形な誘電率あるいは感受率で記述できる場合は自然光散乱(Spontaneous light scattering)過程という。自然散乱に対して、入射する光の強度が十分強く、媒質の光 学特性が変化するような非線形な散乱は誘導光散乱(Stimulated light scattering)と呼ばれ る。 誘電率のスカラー成分(誘電率テンソルの対角項)の変動による光の散乱を スカラー光散乱(Scalar light scattering)という。スカラー光散乱に はブリルアン散乱、レイリー散乱が含まれる。次にラマン散乱のメカニズムについて解説 する。ラマン散乱はレイリーウィング散乱とともに、誘電率テンソルの非対角項の変動に よる散乱に対応している。このような散乱はテンソル光散乱(Tensor light scattering)と呼 ばれる。

種類 メモ
ラマン散乱 散乱媒質を構成している分子の振動モードによる光の散乱である。 固体媒質による場合は、光学フォノン(Optical phonon)による散乱として記述 される
ブリルアン散乱 音波すなわち伝播する圧力波(したがって密度波)による光の 散乱である。固体媒質による場合は音響フォノン(Acoustic phonon)による散 乱として記述される
レイリー散乱 光の波長よりも小さい粒子による弾性散乱。非伝播の密度変動による光の散乱である。形式的には、エントロ ピーの変動による光の散乱として記述される。
レイリーウィング散乱 非等方的な分 子の配向が変動することによる散乱である。分子配向の変化(緩和時間)は非常 に早い(10-12秒オーダー)ので、この成分はスペクトル的に広がったものになる。 等方的な分極率テンソルを持つ分子の場合はレイリーウィング散乱は起こらない。
ミー散乱 光の波長よりも大きい粒子による散乱。
トムソン散乱 電子による長波長光の弾性散乱。
コンプトン散乱 電子による短波長光の非弾性散乱。


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