Subject   : 体の血圧調節

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 体の血圧調節
体には血圧を調節するためのたくさんのしくみがあります。体は心臓が送り出す血液の量、動脈の内径、血流中の血液の量を変化させることができます。血圧を上昇させるため、心臓はより強く速く拍動して、より多量の血液を送り出すことができます。細動脈は縮んで狭くなり、拍動ごとに普通よりも狭い内腔に血液を通すことができます。動脈の内腔が狭くなるため、普通と同じ量の血液が通っても血圧は上昇します。静脈は収縮して静脈内の血液量を減らし、動脈内の血液量を増やすことができます。結果として血圧は上昇します。血液の容量を増やすために血流に体液を加えると血圧は上昇します。逆に、心臓が弱く遅く拍動したり、細動脈や静脈が拡張したり、血流から体液が失われれば、血圧は低下します。

これらのしくみを調節しているのは、無意識下に体内の代謝などを調節する神経系の一部、自律神経系の交感神経と腎臓です。何らかの脅威に対する体の生理的反応である「攻撃‐逃避反応」が起こると、交感神経はいくつかの方法で一時的に血圧を上昇させます。交感神経は副腎を刺激してエピネフリン(アドレナリン)とノルエピネフリン(ノルアドレナリン)というホルモンを放出させます。これらのホルモンは心臓を刺激して、拍動を速く強くさせ、ほとんどの細動脈を収縮させ、一部の細動脈を拡張させます。拡張する細動脈は、意識して動きを調節する骨格筋など、血液の供給量を増やす必要がある部位にあります。交感神経はまた、腎臓を刺激して塩分と水分の排出量を減らし、血液量を増やします。

腎臓も血圧の変化に直接的に反応します。血圧が上昇すると腎臓が塩分と水分の排出量を増やすので、血液量が減り、血圧は正常に戻ります。逆に血圧が低下すると、腎臓が塩分と水分の排出量を減らすため、血液量が増え、血圧は正常に戻ります。腎臓は、アンジオテンシンIIというホルモンの産生を引き起こすレニンという酵素を分泌して血圧を上昇させます。アンジオテンシンIIは、アルドステロンという、腎臓の塩分と水分の保持量を増加させる別のホルモンの放出を誘発することによって、細動脈を収縮させ、血圧を上昇させます。

■ レニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系
レニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系は、血圧を調整するための一連の反応です。 収縮期血圧が100mmHg以下に低下すると、腎臓からレニンという酵素が血液中へ放出されます。 レニンは、血流中を循環している大きなタンパク質、アンジオテンシノーゲンを分解します。分解されたタンパク質はアンジオテンシンIといいます。 アンジオテンシンI は、比較的不活性で、アンジオテンシン変換酵素(ACE)によって分解されます。分解されたものは、非常に活性の高いアンジオテンシンII になります。 アンジオテンシンII は、細動脈の筋肉壁を収縮させ、血圧を上昇させるホルモンです。アンジオテンシンII はまた、副腎からアルドステロンというホルモンを放出させます。 アルドステロンは、腎臓に働きかけ、塩分(ナトリウム)を保持させ、カリウムを排出させます。ナトリウムは水分を貯留させるため、血液量が増加して血圧が上昇します。

たとえば、急激な運動や強い情動などの何らかの変化で血圧が一時的に上昇する際、普通は変化に拮抗し、血圧を正常な数値に保つために体の代償機構の1つが誘発されます。たとえば、心臓が送り出す血液量が増加して血圧が上昇すると、血管が拡張し、腎臓での塩分と水分の排出量が増えて血圧が低下します。
 ⇒ 血圧

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