Subject   : 発熱のパターンとメカニズム

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 発熱のパターンとメカニズム
体温の上昇(発熱)は、感染症や外傷から体を守る反応です。体温が高くなると体の防御機構が増強しますが、一方で不快症状ももたらします。熱があるというのは、口中体温計で約37.8℃より高い状態をいいます。いわゆる「平熱」は約37℃とされていますが、体温は1日のうちでも変動し、早朝は最も低く、夕方に最も高くなって約37.7℃前後まで上がることもあります。

脳の中の視床下部という部位が体温を調節しています。発熱は、視床下部のサーモスタットが実際に高めにセットし直されることによって起こります。体は血液を皮膚表面から体の内部に移動させ、熱が逃げるのを防ぐことによって体温を上げます。ふるえ(悪寒)によって筋肉を収縮させて、熱産生を増やしたりもします。体は、血液が視床下部で新たに設定された高い温度に達するまで熱を発生し続け、達したらその温度を維持します。後になってサーモスタットが平常値にセットし直されると、体は余分の熱を発汗や血液を皮膚の方へ移動させることによって取り除きます。

発熱を引き起こす物質を発熱物質(パイロジェン)と呼びます。発熱物質は体内、体外のどちらでもつくられます。微生物や微生物がつくる物質(毒素など)は、体外でつくられる発熱物質の例です。通常、体内でつくられる発熱物質は単球によってつくられます。体外でつくられた発熱物質は、体を刺激して体内の発熱物質の放出を促すことで発熱を起こします。ただし、発熱の原因は感染症だけではありません。炎症、癌、アレルギー反応でも起こります。

 ○ 発熱のパターン
発熱にはあるパターンがみられることがあります。毎日、いったん高くなってから平熱に戻るというのを繰り返すこともあれば、熱が出たり引いたりして体温は上下するが、平熱には戻らないという場合もあります。特殊な場合(たとえばアルコール依存症、高齢者、乳児など)、重い感染症への反応として逆に体温が下がってしまうこともあります。
マラリアは1日おき、または3日ごとに発熱を繰り返すのが特徴です。

 ○ 原因
熱が出た場合、普通は何か明らかな原因があります。たいていは、医師が問診、診察、必要な場合は胸部X線検査や尿検査といった簡単な検査を行って診断できるような感染症(インフルエンザ、肺炎、尿路感染症など)であることが多いのですが、中には原因がはっきりしないこともあります。
成人に多いのは、感染症、自分自身の組織に対する抗体によって引き起こされる病気(自己免疫疾患)、体のどこかにがん(特に白血病やリンパ腫)が潜んでいる場合などです。

最近の渡航歴(特に海外)から発熱の原因を割り出せる場合もあります。感染症の中には特定の地方でのみ発症するものがあるからです。たとえば、コクシジオイデス症(真菌感染症の1つ)はまず米国南西部でしかみられない病気です。特定の物質や動物との接触も診断の重要な鍵となります。たとえば、精肉業者がブルセラ症になる確率は一般の人より高いという例があります。

、特定の微生物に対する抗体を調べる血液検査法も用いられます。白血球数の上昇は通常、感染があることを意味します。白血球分画(白血球数を種類別に%で表したもの)をみるとさらに詳しいことがわかります。たとえば、好中球が増加している場合は、急性の細菌感染症が疑われます。好酸球が増加している場合は、条虫や回虫といった寄生虫に感染している可能性があります。

約38.3℃以上の熱が何週間も続き、詳しい検査でも原因が特定できない場合、原因不明熱と診断されることがあります。このような場合は、原因がまれな慢性感染症であるとか、感染症ではなく結合組織病や癌、あるいは何か他の病気であることも考えられます。

発熱の主な原因
  • 感染症
  • アレルギー反応
  • ホルモンの異常(褐色細胞腫や甲状腺機能亢進症など)
  • 自己免疫疾患(関節リウマチなど)
  • 過度の運動(特に気温の高いとき)
  • 日光の浴びすぎ(特に気温の高いとき)
  • 薬剤(麻酔薬、抗精神病薬、抗コリン作用薬などの使用、アスピリンの使いすぎなど)
  • 体温の調節を行う脳の視床下部の損傷(脳外傷や腫瘍などによる)

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