Subject   : 酸素運搬タンパク質

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 酸素運搬タンパク質
酸素運搬タンパク質で有名なのは、ヘモグロビンであるが、 ヘモグロビンの構造は生物種によって異なる。ヘモグロビンは生物界のそれぞれの界に存在するにしても、すべての種が持つというわけではない。グロビンを1つだけ含むヘモグロビンは、細菌・原生生物・藻類・植物などの原始的なものに観察される傾向がある。線虫類・軟体動物・甲殻類などは、対照的に、脊椎動物のヘモグロビンよりはるかに大きいヘモグロビンを持つ。特大ヘモグロビンは、菌類および巨大環形動物に見られ、グロブリンとその他のタンパク質を含んでいる。生物界におけるヘモグロビンの、特に顕著な事例は、巨大な(2.4メートルに達する)チューブワーム (Riftia pachyptila, またの名を Vestimentifera) で観察される。この種は海底火山の周辺によくいるものである。これらは消化器系を持たない。かわりに、体重の半分ほどに達する重量のバクテリアを体内に飼っており、海底からのH2Sと水中のO2に反応して、H2OとCO2から養分を作り出すエネルギーを得る。これらの生物は、末端に、濃い赤色の扇状の器官("plume") を持ち、それを海水中に伸ばして、バクテリアのためにH2OとO2を吸収し、また同化のためにCO2を取り入れている(光合成を行う植物と同様)。この器官は鮮やかな赤色をしているが、これは何種かの非常に巨大なヘモグロビンのためである。その中には144ものグロブリン鎖を持つものが存在する(おそらくそれぞれがヘム構造との結合を持っている)。これらチューブワームのヘモグロビンは、硫化物が存在する環境でも酸素を運搬できる点で特徴的である。他の種のヘモグロビンは、硫化物に働きを阻害されることが通常であるが、これは硫化物の運搬さえもできる。

■ 他の酸素結合タンパク質


 ○ ミオグロビン(Myoglobin)
ヒトを含む多くの脊椎動物の筋肉組織に見られる。筋肉組織の色が赤と灰色があるのはこれのためである。タンパク質としての構造と配列はヘモグロビンに非常に近いが、4量体ではなく単量体であり、cooperative bindingを持たない。酸素運搬よりも、酸素の貯蔵のために用いられる。

 ○ ヘモシアニン(Hemocyanin)
自然界で2番目に多く見られる酸素運搬タンパク質である。多くの節足動物・軟体動物の血液に見られる。鉄原子のヘム基のかわりに銅の配合団を持つ。酸素結合時は青色になる。

 ○ ヘムエリトリン(Hemerythrin)
海棲の無脊椎動物と、環形動物のいくつかの種の血液中に存在し、酸素を運搬する。ヘム基ではない鉄原子を含む。酸素結合時はピンク〜紫色になる。非結合時は透明である。

 ○ クロロクルオリン(en:Chlorocruorin)
多くの環形動物に見られる。Erythrocruorinに非常に近いが、ヘム団の構造が明らかに異なる。酸素非結合時は緑色になり、結合時は赤色になる。

 ○ ヴァナビンス(en:Vanabins)
vanadium chromagensとしても知られる。ホヤの血液に見られる。酸素結合のために、レアメタルのバナジウムを配合団の中に含んでいると推測されている。

 ○ エリトロクルオリン(en:Erythrocruorin)
ミミズを含む多くの環形動物に見られる。巨大分子の血中遊離タンパク質で、鉄原子・ヘム基と結合したタンパク質サブユニットが数十〜数百集まって、分子量350万ダルトン以上の複合タンパク質を作っている。

 ○ ピンナグロビン(en:Pinnaglobin)
二枚貝の一種Pinna squamosa(fr:Pinna nobilis)でのみ見られる。茶色の、マンガンを含むポルフィリンを持つタンパク質である。

 ○ レグヘモグロビン(en:Leghemoglobin)
アルファルファやダイズなどのマメ科の植物で見られる。これらの根には窒素固定バクテリアがいるが、このタンパク質により酸素から守られている。鉄ヘムを持つ

 ⇒ アミノ酸

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