Subject   : 生体内でのアンモニアの産生

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 生体内でのアンモニアの産生
 アンモニアは、主に、腸内や、腎臓で産生され、血液中に放出される。食餌に含まれる蛋白質や、消化管への分泌液に含まれる尿素が、腸内細菌によって分解され、多量のアンモニアが産生される。腎静脈中のアンモニア濃度は、腎動脈中のアンモニア濃度より常に高い。アンモニアは、骨格筋や脳でも産生される。  アンモニア産生は、筋肉運動や、食事摂取(蛋白摂取)により増加する。
 アミノ酸の窒素は、ASTなどによるアミノ基転移反応(tarnsamination)、GDHなどによる酸化的脱アミノ反応(transamidation)を経て、アンモニアとなり、尿素回路で、尿素に変換し、排泄される。

■ 肝臓でのアンモニアの産生と処理
 肝臓は、循環血中(門脈血中)より、アンモニアとグルタミンを、取り込む。  門脈周囲の細胞(periportal cells)内で、グルタミンは、グルタミナーゼにより分解され、その結果生成されるアンモニアは、循環血中を肝臓に流れて来たアンモニアと共に、尿素回路で、尿素に変換される。  循環血中を肝臓に流れて来たアンモニアは、門脈周囲の細胞(periportal cells)内で処理されないと、肝静脈周囲の細胞(perivenous cells)で、グルタミン合成酵素により、グルタミンに変換される。  従って、肝臓は、アンモニアを取り込んで、尿素を排泄するが、(門脈血中と肝静脈血中とで)グルタミンの濃度は、ほとんど変化しない。

■ 腸管内でのアンモニア産生
 腸管内でも、アンモニアが産生される:腸管内では、食事(食餌、食物)由来のアミノ酸が、粘膜グルタミナーゼやGDH(小腸)、細菌デアミナーゼ(大腸)により、分解され、また、尿素が細菌ウレアーゼ(大腸)により分解され、アンモニアが、生成される。  血中アンモニアの大部分は、腸管(消化管)内で、小腸粘膜や大腸内細菌により産生されたアンモニアと言われる。小腸粘膜グルタミナーゼにより生成されるアンモニアは、腸管内で産生されるアンモンニア量の約1/2を占める。  腸管内で産生されたアンモニアは、吸収されて、門脈血中を肝臓に輸送され、尿素回路で尿素に変換されたり、グルタミン酸やグルタミンが生成される。  なお、門脈-体循環短絡路があり、肝硬変では、この経路が発達して、門脈血が、体循環に入り、高アンモニア血症が生じる。

■ アミノ酸の異化によるアンモニア産生
 体内では、蛋白質代謝の過程で、アミノ酸の異化(脱アミノ反応)に伴なう窒素代謝で、アンモニアが生成される。  なお、脳や骨格筋では、グルタミン合成酵素などにより、アンモニアは処理され、グルタミンやアラニンとして、血中に放出され、腎臓、小腸、肝臓で代謝される。

■ GDHによるアンモニア産生
 肝臓のミトコンドリア内で、GDH(グルタミン酸脱水素酵素)は、アンモニアを処理し、グルタミン酸を生成する:アンモニアは、GDHの平衡をグルタミン酸(Glu)生成の方向にする。アンモニアは、GDHによるグルタミン酸生成(アミノ酸同化生成)に必要なので、(肝臓内の)アンモニア濃度が、極端に低下することは、体内で合成される非必須アミノ酸の濃度を、低下させてしまうおそれがある。このようにして、GDHは、アンモニアを処理する。なお、GDHは、腎臓(尿細管細胞)、脳、腸にも存在している。  GDHの反応は可逆的で、アンモニアとα-ケトグルタル酸から、グルタミン酸を生成するのとは逆に、グルタミン酸を異化(nitrogen liberation)して、アンモニアとα-ケトグルタル酸とに分解する異化反応も、GDHにより起こなわれる(運動時など)。このようにして、GDHは、アンモニアを産生(生成)する。しかし、GDHの平衡定数は、グルタミン酸を生合成する側に偏っている。


■ グルタミナーゼによるアンモニア産生
 脳などで生成されたグルタミンは、腎臓、腸管、肝臓などで、グルタミナーゼ(glutaminase)により、アンモニアとグルタミン酸とに、分解され、アンモニアが産生(生成)される。グルタミン酸は、さらに、GDHにより分解され、アンモニアが産生されたり、m-ASTにより、尿素回路で使用されるアスパラギン酸に変換される。

 ⇒ 尿素サイクル(尿素回路、オルニチン回路)

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