Subject   : カイロミクロン(chylomicron)

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 カイロミクロン(chylomicron)
 カイロミクロンは、トリグリセリド(中性脂肪)が主成分(約90%)で、小腸から吸収された外因性(食事性)のトリグリセリドを含んでいる。  カイロミクロンには、外因性(食事由来)のトリグリセリドが86〜92%、コレステロールエステルが0.8〜1.4%、遊離コレステロールが0.8〜1.62%、リン脂質が6〜8%、蛋白(アポ蛋白)が1〜1.5%、含まれている。  カイロミクロンと、VLDLは、トリグリセリドリッチリポ蛋白と呼ばれる。
 食事中の脂質(トリグリセリド)は、小腸や胃で消化(分解)され、遊離脂肪酸とモノグリセリドとに分解される。小腸内腔内で、遊離脂肪酸とモノグリセリドとは、それぞれのキャリア蛋白に結合して、小腸絨毛から吸収される。長鎖脂肪酸は、大部分が、腸管粘膜上皮細胞内で、再び、トリグリセリドに合成され、カイロミクロンを構成し、胸管リンパより、大循環(血液中)に入る。短鎖脂肪酸や、一部の長鎖脂肪酸は、トリグリセリドに再合成されることなく、拡散により、腸管粘膜を通過し、直接(リンパ系を経ずに)、門脈(血液中)に入る。
 カイロミクロンは、リンパ管を経て血中に分泌される。  カイロミクロンに含まれる、アポC-IIというアポ蛋白は、トリグリセリドを脂肪酸とグリセロールに分解するリポ蛋白リパーゼ(LPL)を活性化させる:LPLは、血管内皮細胞表面に存在する。

 カイロミクロンの代謝は、まず、LPLにより、含まれるトリグリセリドが分解され、レムナントとなり、次いで、レムナントが、肝臓で、異化(分解)される: 
 カイロミクロンは、主に脂肪組織や筋肉の毛細血管内皮細胞表面のリポ蛋白リパーゼ(LPL)により、含まれるトリグリセリドが分解され、粒子が小さくなり、コレステロールに富んだカイロミクロンレムナントになる。  カイロミクロンレムナントは、含まれるアポEというアポ蛋白を介して、レムナント受容体により、肝臓に取り込まれるとされる。  このようにして、カイロミクロン中の食事由来のトリグリセリドや、コレステロールは、肝臓に取り込まれる。

 カイロミクロンレムナント中の食事由来のコレステロールは、肝臓のコレステロール合成系を抑制する。従って、食事由来のコレステロールが増加すると、体内(肝臓)でのコレステロール合成は抑制され、コレステロールが過剰にならないように調節される。
 このように、カイロミクロンは、食事由来のトリグリセリドを脂肪組織や筋肉に運搬し、コレステロールを肝臓に運搬する。
 カイロミクロンが増加する、I型高脂血症の患者さんの血液を、遠心分離して血清にすると、血清の上層に白いクリーム層が見える。
 食事(食餌由来)のカイロミクロンは、リンパ系を経て、血中に流入する。
 カイロミクロンの蛋白は、60%がアポC(C-I、C-II、C-III)、22%がアポB(大部分は、腸由来のB-48)、6%がアポA-I、6%がアポA-IIと言われる。  カイロミクロンは、血中で、アポEを獲得し、A-Iを喪失し、さらに、LPLを活性化させるアポC-IIを獲得する。
 カイロミクロンは、最大で、直径が1μm(10,000Å)あるので、光学的顕微鏡で、見ることが可能(乳状脂粒)。
 小腸で吸収された脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK)は、カイロミクロンと結合し、リンパ管を経て、血中に輸送される。

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