Subject   : 真空計

カテゴリー  : 学術情報 


 真空計
真空計は、全圧真空計と分圧真空計に分けられます。 全圧真空計は、気体の種類を問わず全体の圧力を測定する真空計です。 これに反し分圧真空計は、気体の種類別に圧力を測定します。
 全圧真空計は、さらに絶対真空計とその他の真空計に分けられます。絶対真空計とは、JIS Z 8126によると、「物理量の測定だけから圧力が求められる真空計」と定義されています。
その他の真空計には、気体の熱伝導を利用するもの、気体の粘性を利用するもの、 気体の電離作用を利用するものがあります。
 絶対真空計
絶対真空計には液柱差真空計、マクラウド真空計、隔膜真空計があります。
名称 測定範囲 メモ
液柱差真空計 水銀:大気圧〜133
油:1000〜1
U字管の片側を大気に開放せず真空に吸引するか、片側を封止しています。後者の場合、封止側にトリチェリの真空。使用する液体には、水銀もしくは油を使用します。
マクラウド真空計 103〜10−2Pa 原理的には液柱差式と同じですが、測定対象の気体の体積を100〜1000分の1に圧縮して測定します。
隔膜真空計 大気圧〜10−2Pa ダイアフラム式圧力計の片面を真空にして封止したもの 静電容量方式が主。従来は感度を上げるため、隔膜には金属、最近は セラミックやシリコンのダイアフラムを使用

 熱伝導を利用する真空計
電流によって加熱された金属の細線を気体中におくと、細線は気体分子によって熱を奪われます。このときの冷却の度合は気体の圧力によるので、熱線の温度を測定して気体の圧力を知ることができます。これはピラニ真空計の名でよく知られています。熱線の温度を熱電対により測定する製品や、熱線の代わりにサーミスタを使用する製品もあります。  この真空計は精度はあまり高くありませんが、簡単で取り扱いが容易なのでよく使用されています。測定範囲は大気圧から10−1Pa程度です。
名称 測定範囲 メモ
ピラニ真空計 100〜10-1Pa 熱伝導の変化 細い線の温度変化を電気抵抗の変化で測定
熱電対真空計 100〜10-1Pa 細い線の温度変化を熱電対で測定
サーミスタ真空計 100〜10-2Pa 細い線の温度変化をサーミスタで測定

 粘性を利用する真空計
気体中に小さい鋼製の球を磁気的に浮かし、回転磁場により高速回転させます。回転磁場を切ると、気体分子による摩擦(粘性)のため鋼球の回転速度は徐々に減少しますが、この減少の度合より気体の圧力を求めることができます。この真空計は、通常スピニングローター真空計といわれています。気体の種類による影響はありますが、10−2〜10−5Paの範囲ではほかの真空計より精度が良いとされています。
 気体の電離作用を利用する真空計
フィラメント、イオンコレクタ、陽極グリットをもつ真空管の内部に測定対象の気体を入れます。フィラメントから出た熱電子が、真空管内の気体分子に高速で衝突し、これを電離させてイオンにします。このイオンの量は、気体分子の密度に比例するので、このイオン電流を測定して気体の圧力を知ることができます。この原理の真空計は 電離真空計と呼ばれ、多くの種類があり、 10−11Paといった非常に低い圧力まで測定できる製品もあります。
 分圧真空計
分圧真空計は、排気した真空装置に残っている気体の組成を知るために使用する真空計で、残留ガス分析計ともいいます。原理的には質量分析計です。

 その他の真空計
● ペニング真空計とマグネトロン真空計(冷陰極電離真空計)
電子レンジの中にあるマグネトロンと同じような電極を真空中におくと、陽極と陰極の間に回転電子雲ができます(マグネトロン放電)。 この回転電子雲は、電流値でいうと1Aくらいになります。 この電子雲の中の電子は、回転運動をしながら真空中の気体分子と衝突し、イオンを作ります。 このイオンは陰極に流入しますが、その量(電流)は大体圧力に比例します。 この電流によって、圧力測定を行います(電子レンジの中では、この回転電子雲は、マイクロ波を発しています)。 中心陰極は必ずしも必要ではなく、中心陰極のない構造を発明者の名をとって、ペニング真空計と呼んでいます。
● 水晶摩擦真空計
水晶で作った音叉も、一定の大きさの音を出すのに、空気の多い程抵抗が大きく、多くの電力が要ります。 この電力の変化(実際は電流の変化)を測定して圧力を測定します。

 ⇒ 圧力の換算

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