Subject   : T細胞

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学 


 T細胞
胸腺Thymus由来のリンパ球をT細胞といいます。 全身の血管やリンパ管を循環しているリンパ球のうち、約 70%を しめるのがT細胞です。 合格率わずか数%という厳しいテストを経て胸腺から送り出されるT 細胞は、 この時点ですでに働きの異なる三つのグループに分かれていて、それぞれ 「ヘルパーT 細胞」 「キラーT 細胞」 「サプレッサーT 細胞」と呼ばれます。 ヘルパー(helper)は「助っ人」で、キラー (killer) は「殺し屋」です。 サプレッサー(suppressor)は「ブレーキ役」というような意味です。
三種類のT細胞の働きは以下のとおりです。
● ヘルパーT 細胞
ヘルパーT細胞には、免疫反応をコントロールする拮抗的な2種類の 細胞があります。それは、1型が Th1細胞,2型が Th2細胞です。 アレルギー患者では,Th2細胞が増殖しており,インターロイキン4や10の 作用でTh1細胞の増殖が抑制される. また,乳児期にTh1細胞が増殖するとインターロイキン12やインターフェロンγの作用により,一生Th2細胞の増殖は抑制される.100人採血し,特異的IgE抗体を測定すると高値群と低値群の2つのグループに分かれるのは,Th1細胞とTh2細胞の拮抗作用によるものです。
ヘルパーT 細胞は、マクロファージなどが持っている HLA クラス U抗原に 付着した「非自己」のタンパク質の断片を抗原レセプターで認識し様々な サイトカインを分泌し、 マクロファージを活性化し、その中にとりこまれた 細菌などを破壊するのです。
また、これらのサイトカインの中には、 B 細胞に働いて抗体を産生するのを 助けるものや、抗体を合成するのを助けるものもあります。 T細胞はヘルパー・キラー・サプレッサーのいずれもみずからは抗体を 作りませんが、このうちヘルパーT 細胞が「助っ人」となってB細胞に 抗体を作らせ、免疫反応を高めるように働くのです。
● キラーT細胞
キラーT細胞は、ヘルパーT細胞の助けをかりてウイルスに乗っ取られた 細胞の HLAクラスT抗原に現れるウイルス由来のタンパク質の断片を 抗原レセプターで認識し、その細胞に直接取り付いて破壊してしまう 「殺し屋」です。 また、癌化した細胞の HLAクラスT抗原に現れる癌特有のタンパク質の 断片も同じように認識し、癌細胞を破壊します。
● サプレッサーT細胞(レギュラトリーT細胞)
サプレッサーT細胞は、キラーT細胞と同様、様々な細胞の HLAクラスT抗原に 付着した「非自己」のタンパク質の断片を抗原レセプターで認識します。 そしてサイトカインを分泌しますが、そのサイトカインは免疫反応を抑える ように働きます。免疫反応がいつまでもだらだらと続くのは、「自己」に とっても危険なことなので、必要に応じて「ブレーキ役」の サプレッサーT細胞がブレーキをかけ、終了に導きます。
● HLAクラスT抗原
HLA-A・B・Cの三つの遺伝子によって決定されるタンパク質分子は、赤血球などごく 一部の例外を除く、身体中のすべての細胞の表面に現れています
● HLAクラスU抗原
HLA-DP・DQ・DRの三つの遺伝子によって決定されるタンパク質分子は、マクロファ ージやB細胞など免疫細胞(白血球)の一部と、皮膚細胞の一部、そして胸腺( T細胞を教育して「自己」と「非自己」を見分ける能力を授ける臓器)の細胞などに現れています。
 ⇒ 造血幹細胞(免疫細胞)

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