Subject   : 共鳴トンネル効果(resonant tunneling effect)

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 共鳴トンネル効果(resonant tunneling effect)
  トンネル効果の一種。二つのポテンシャルの壁(ポテンシャル障壁)をもつ半導体構造で,入射してくる電子のエネルギーが,二つのポテンシャル障壁に閉じこめられ電子のとるエネルギーと一致した時,エネルギーの減衰なしに障壁を通り抜ける現象を言う。

V−X族半導体のヘテロ接合構造でできた共鳴トンネル・ダイオードが実現しており,電圧−電流特性に大きな負性抵抗が観測された。マイクロ,ミリ波の発振器や,これを用いたトラシジスタ(共鳴トンネル・トランジスタ)が作られている。

結晶成長技術は,原子の数が数えられるくらい非常に薄い層構造を結晶基板上に形成することを可能にする。化合物半導体GaAsとAlAsを層状に積み上げたもので,それぞれの厚さは数nm(原子層にして10〜40層程度)である結晶構造をつくることができる。この構造の伝導帯は電子に対して2つのエネルギー障壁を持つ。2つの障壁に囲まれた部分は量子井戸と呼ばれるが,ここでは電子はある限られたエネルギーしか持つことができない。
これらは,電子が波の性質を持つためである。電子の波は障壁のところで固定されるから,その波長の1/2が量子井戸の幅(あるいは整数分の1)と一致しなければならない。波長が決まるとエネルギーも決まるので,電子は限られたエネルギー(これを量子準位と呼ぶ)しか持てないことになる。このとき,量子準位と同じエネルギーを持った電子は2つの障壁を通り抜けることができる。つまり,このエネルギー準位のところに電子が通り抜けられるトンネルが形成されるため,これを共鳴トンネル効果と呼ぶ。

共鳴トンネル効果はnm程度の非常に薄い二重障壁構造において生じる現象で,THzに達する超高速性,微分負性抵抗から生じる高い機能性,室温で動作可能という特長から興味を集めている。

 ○ 共鳴トンネル素子(resonant tunneling device)
化合物半導体の中に、ごく薄い電子の通れない層を2つ作る(それぞれの厚さは数nm、原子層にして5から20層程度)と、その層の間では量子効果により電子が取り得るエネルギーは特定の不連続な値をとり、あるエネルギーをもった電子のみが層間を通り抜けることができる。 これを利用した素子は、トンネルダイオードのように、ある電圧領域では電圧を加えるほどに電流量が減少する「負性抵抗」が存在する。この特異な電流-電圧特性と、その過程が高速である事、室温でも動作可能であることなどから注目を集め、盛んに研究されている。 共鳴トンネル効果を用いた周波数特性が数THzの高性能素子を共鳴トンネル素子という。
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