Subject   : レンチテクトニクス(wrench tectonics)

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 レンチテクトニクス(wrench tectonics)
 連続や変位が非常に良好であり、深部の基盤をも変形に巻き込んで大規模に発達する高角の走向移動断層をレンチ断層という。レンチ断層の形成をもたらすような横ずれ成分の卓越する応力場における構造運動を総称してレンチテクトニクスという。地殻の最大短縮の方向と最大伸長の方向がともに水平面内にある応力場において展開され、横ずれ運動に伴うねじれ作用(wrenching)が特徴的である。

 レンチテクトニクスによって発達する構造要素は、応力楕円によって模式的に表現されるような特徴的な発達方向・配列様式を示す。すなわち、最小主応力方向にほぼ平行な軸をもち主レンチ断層に沿って雁行状に配列する褶曲・逆断層、最大主応力軸にほぼ平行に発達する正断層、その両者に斜交する方向に発達する走行移動断層等からなる。また、レンチ断層を挟んで相対する地質体の移動方向が斜め(oblique)である場合に、フラワーストラクチャーが形成されることがある。

 レンチ断層は衛星画像上において、大規模なリニアメントとして比較的容易に抽出される。また、上記の構造要素の配列状況に着目することによって、レンチテクトニクスの場を画像上で認定することが可能となる。それによって、石油探鉱の予察段階においてその地域に発達する堆積盆地・トラップのタイプ・性質等の予測に関して、貴重な情報が提供される。

 ○ フラワーストラクチャー(flower structure)
 ほぼ垂直方向に地下深部まで達する断層が、構造上位において分岐し上方に向かって花のように開いた形態をとるようになった構造のこと。
 分岐した断層群が大部分正断層から構成され、それらによって変位した地層が全体として向斜状を呈するものをネガティブ・フラワーストラクチャー、また断層群が大部分逆断層から構成され、変位した地層が全体として背斜状を呈するものをポジティブ・フラワーストラクチャーという。
 レンチテクトニクス下にあって、水平移動する地質体相互の移動方向が平行ではなく、斜めに近づく方向にある時に斜め圧縮力(transpression)が勝り、ポジティブ・フラワーストラクチャーが、また斜めに遠ざかる方向にある時に斜め引張力(transtension)が勝り、ネガティブ・フラワーストラクチャーがそれぞれ形成される。
 ⇒ 活断層(active fault)

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