Subject   : 強誘電性と強誘電体

カテゴリー  : 学びの館 > 物理・材料 


 強誘電性と強誘電体
強誘電体(ferroelectrics)とは誘電体の一種で、外部に電場がなくても電気双極子が整列しており、かつ双極子の方向が電場によって変化できる物質を指す。また、このように電気双極子モーメントが自発的に整列した状態を強誘電状態、この性質を強誘電性と呼ぶ。 。

代表的な強誘電体としてチタン酸バリウム BaTiO3 やチタン酸ジルコン酸鉛 Pb(Zr,Ti)O3 があり、FeRAM(強誘電体メモリ)などに使用されている。 また強誘電体は全て圧電効果を有するため、アクチュエータなどとして使用されるものも多い。
機構の違いから、強誘電体は「変位型」と「秩序-無秩序型」の2つに分類される。

● 変位型
チタン酸バリウム BaTiO3 をはじめ、強誘電体の多くは変位型強誘電体に分類される。このタイプでは、高温相(=常誘電体)では自発的に整列する永久双極子を持たないが、キュリー温度(Tc、相転移温度)以下の温度では結晶が少し縦長になって正負のイオンが相対的に変位するため自発分極が発生する。この時の結晶構造(=イオンの配置)や誘電率の変化は下図のようになっている。

● 秩序‐無秩序型
圧電体のうち、外から電界を与えなくても自発的な分極を有しているものを特に焦電体と呼ぶ。微小な温度変化に応じて誘電分極(およびそれによる起電力)が生じる性質が名称の由来である。この性質は赤外線センサなどに応用されている
焦電効果は温度の変化に応じて、自発分極をもつセラミック(チタン酸ジルコン酸鉛 (PZT) など)の表面に帯電する電荷が増減する現象である。焦電素子は光を単に熱源として用いており、素子自体の波長依存性が低いため、外部に用意したフィルタによって容易に必要な波長を選ぶことができるのが特長である。また安価であることも特長である。一方、応答時間は比較的長い。

電気双極子が高温ではランダムに配置し、温度の低下とともに整列する強誘電体を秩序‐無秩序型強誘電体と呼ぶ。NaNO2などが代表的な物質であり、強誘電状態では右図のようにNO2双極子の向きが整列して自発分極が生じる。なお、高温では熱エネルギーによってNO2がランダムに配向するため、巨視的な分極は0になる。

● 反強誘電体
強誘電体の電場に対する応答は強磁性体の磁場に対する応答によく似ている。そして、磁性体の一種として反強磁性体があるのと同様、誘電体の一種として反強誘電体 (antiferroelectrics) が存在する。電気双極子の向きがある方向に沿って交互に逆を向いているため、全体としてマクロな自発分極は0となる。代表的な物質はジルコン酸鉛 PbZrO3 やリン酸一アンモニウム (NH4)H2PO4 などである。
また、強い外部電場を印加する事によって自由エネルギーを変化させ、強制的に強誘電体に相転移させることも可能である。


 ⇒ 誘電体、圧電体、焦電体
 ⇒ 圧電効果と圧電体

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