Subject  : 口腔癌

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 口腔癌
口の悪性腫瘍。直径約1センチメートル以下の悪性腫瘍ならば、通常は治癒します。しかし残念ながら、ほとんどの悪性腫瘍は、それ以上に大きくなってあごの下や首のリンパ節へ広がるまで診断されません。発見が遅れると口腔癌の25%は死に至ります。口腔癌の2大危険因子は喫煙と飲酒です。
歯や歯の詰めものが壊れてとがった縁や、入れ歯などによって繰り返し刺激されていると口腔癌のリスクが増大します。梅毒は、何年間も治療をせずに放っておくと、唯一舌の先端にできる舌癌を引き起こします。有害な太陽光線は口唇癌の原因となります。 口腔癌の約3分の2は男性に起きていますが、過去20〜30年間の女性喫煙者の増加に伴って、男女差が少なくなっています。他のほとんどの癌と同様に、年をとるにつれて口腔癌のリスクは増大します。

 【口腔癌の種類】
扁平上皮癌は口腔癌の中で最も多く、40%近くが下唇に発生し、残りの多くは口底や舌に発生します。硬いかたまりや境界がはっきりした潰瘍ができ、断続的に出血します。患部は白色、赤色、あるいは赤白入り混じった色に変色し、表面はなめらかで隆起しています。いぼ状癌と呼ばれる口腔癌では、口の粘膜の表面に白色の溝が現れます。
悪性黒色腫やカポジ肉腫は、それほど数は多くありません。悪性黒色腫は日焼けが関係していて、普通皮膚の表面に発生します。ただし口の中にできることもあり、特に口蓋に最も多く発生する悪性黒色腫は、皮膚に発生した癌が口へ転移したものです。悪性黒色腫は境目が均一ではなく、凸凹の不規則な形をしています。色は暗紫色、茶色、黒色とさまざまで点状や斑状に現れます。他のほとんどの癌と同様に出血することもあります。カポジ肉腫は、皮膚の近くにある血管、あるいは口の中やのどの粘膜にできる癌です(皮膚癌: カポジ肉腫を参照)。エイズ患者ではカポジ肉腫は口の中、特に口蓋に発生します。腫瘍は紫色や茶色をしていて、わずかに隆起しています。
唾液腺癌は良性腫瘍よりも発生数はずっと少なく、最も多くみられるのが粘液性類表皮癌です。粘液性類表皮癌は、口蓋の小唾液腺に多く発生します。塊状の腫瘍が、下あごの下や奥にある大唾液腺の1つに発生します。
あごの骨癌には、骨肉腫と転移性腫瘍があります。転移性腫瘍とは、体の他の部分で発生した癌があごへ広がったものをいいます。

 【症状】
口腔癌は、かなり長い期間痛みが起こりませんが、やがて癌が近くの神経を侵しはじめると痛み出します。舌や口蓋にできた癌による痛みは、のどの痛みと同様に食べものを飲みこんだときに起こります。
唾液腺腫瘍の増殖初期には痛みは起きたり起きなかったりしますが、痛みはいったん出はじめると、特に食事中にひどくなります。これは、食べものに刺激されて唾液分泌が盛んになるためです。あごの骨の癌では、痛みとしびれやピリピリした感じ(異常感覚)がよく起こります。この異常感覚は、ちょうど歯の麻酔が切れかけたときに感じるしびれに似ています。唇やほおにできる癌では、腫れた組織をうっかりかむと、痛みが始まります。
扁平上皮癌は、一見皮膚の潰瘍のように見えますが、多くの場合その下にある組織まで侵されています。唇や口の他の部分にできる癌は岩のように硬くなって下部組織に癒着しますが、同じ領域にできる良性のかたまりはくりくりと動きます。かみタバコやかぎタバコを好む人はほおの内側に隆起した白色の瘤ができ、この瘤が成長していぼ状癌になります。悪性腫瘍は、急速に成長して硬くなる傾向があります。小唾液腺に初発する癌は、小さな腫れに見えます。
歯肉、舌、口腔粘膜に変色が現れるときは、癌の徴候である可能性があります(口にできる腫瘍: 前癌病変を参照)。口の中に、最近になって急に茶色や黒っぽい変色個所が現れたときには、黒色腫の可能性があります。唇でいつもタバコやパイプがあたっている部分が「スモーカーズ・パッチ」と呼ばれる、表面が平坦な茶色のそばかす状のしみに変化することがあります。

 【診断と治療】
口腔癌は、その形状と症状から癌と推定されます。黒色腫は、正常な色素沈着や他の原因による変色と癌との判別が必要なので、顕微鏡検査用の組織サンプルを採取する生検が行われます。

口の中や周囲で発生した癌が近くのリンパ節へ転移すると、リンパ節が腫れます。それよりも遠い部分への転移は扁平上皮癌ではまれですが、骨肉腫では頻繁に起こります。さらに悪性黒色腫は非常に転移しやすく、脳などの器官にまで転移します。
扁平上皮癌は、癌がリンパ節に転移する前に癌全部と癌周囲の正常組織を除去すれば治癒率が高く、癌と診断された人のうち平均68%の人が、少なくとも5年以上生存しています。しかし、癌がリンパ節まで広がってしまうと、5年生存率は25%に下がります。残念なことに扁平上皮癌の治癒率は、過去数十年間ほとんど改善していません。一方、いぼ状癌は、高齢になってから発症し、増殖のスピードも遅いため、命にかかわることはまれです。悪性黒色腫の5年生存率は、わずか5〜10%です。
扁平上皮癌と、その他のほとんどの口腔癌の治療は手術と放射線療法が中心になります。手術と放射線療法は併せて行われることが多く、特に癌が大きい場合には併用されます。悪性黒色腫には放射線療法が効かないため、手術が中心になります。
唇の癌手術では、レーザーで癌を焼き切る方法と同様にモース変法と呼ばれる方法が容貌の損失を最小限にとどめるのに効果を上げています。
手術と放射線療法を行う場合と、放射線療法だけ行う場合があります。 放射線療法によって唾液腺が破壊されることが多く、そのために口が乾燥してむし歯などの歯のトラブルが発生します。しかし唾液腺が破壊されていなければ、放射線照射完了から数週間後には再び唾液が分泌されはじめます。 高圧酸素療法によって、放射線照射部位の骨と周囲の軟組織を壊死(放射線性骨壊死)させずにあごを治癒させることができます。
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