Subject  : 恐怖症

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 恐怖症
恐怖症とは、特定の外的状況に対する非現実的な激しい不安と恐怖感が持続する状態です。
恐怖症がある人は、不安や恐怖感を引き起こしそうな状況を避けるか、多大な苦痛を感じながらその状態に耐えています。しかし、不安が過剰であるという自覚は本人にもあり、自分に何らかの問題があることは認識しています。

 ○ 広場恐怖
広場恐怖は、不安やパニックに襲われたとき、すぐには逃げられないような状況や場所に閉じこめられることに不安を抱き、避けようとすることを特徴とします。
具体的には、不安が激しくなったときに容易に逃げ出すことができないような、人が多くにぎやかな場所に閉じこめられることに恐怖感を抱く状態をいいます。広場恐怖の人が恐れる典型的な状況には、銀行の窓口やスーパーマーケットのレジで待っている人の列に並ぶ、劇場や教室の真ん中の席に座る、バスや飛行機に乗るといったものがあります。こういった状況でパニック発作を起こした後に、広場恐怖になる人もいます。広場恐怖はしばしば日常生活に支障をもたらし、自宅に引きこもる人もいます。

 ○ 社会恐怖(社会不安障害)
社会恐怖(社会不安障害)は、特定の社会的状況や人前に出る状況に対して著しい不安を抱くことを特徴とし、そうした状況をしばしば避けようとします。
社会恐怖の中で最も重症度が高い回避性人格障害になる割合は、男性の方が女性よりも高いことが示されています。
人前に出ることを伴う特定の状況に関連して起こるタイプもあります。こうしたタイプでは大勢の人の前で何かをするときにのみ不安が生じ、同じことを自分1人で行っても不安になることはありません。社会恐怖の人が共通して不安を感じる状況としては、人前で話をする、楽器の演奏や教会での聖書の朗読など大勢の人の前で何かをする、人と食事をする、証人の面前で署名する、公衆トイレを使用するといったものがあります。社会恐怖の人は、自分の行為や言動がほかの人の目に不適切に映るのではないかと心配します。また、不安を抱いていることが他者にあからさまにわかってしまうのではと心配し、汗をかいたり、赤面したり、吐いたり、体や声がふるえたり、途中で何を話していたかわからなくなったり、自分をうまく表現する言葉が見つけられなかったりするのではないかと思い悩みます。

 ○ 特定の恐怖症
特定の恐怖症とは、特定の対象物や状況に不合理な恐怖感を抱く状態をいいます
大きな動物、暗闇、見知らぬ人に対する恐れなど、特定の恐怖症の中には幼いころに始まるものがあります。その多くは成長とともになくなります。ネズミなどのげっ歯動物や虫、嵐、水、高所、飛行機、閉所などの恐怖症は概して、成長してから発症します。他にも、雷恐怖症、塵埃恐怖症(ちりやほこりを恐れる)、 尖端恐怖症 (針などとがったものを恐れる)、渡橋恐怖症、幽霊恐怖症 など様々な恐怖症があります。
こうした人は心拍数の減少や血圧の低下から実際に失神を起こすことがありますが、この現象は他の恐怖症や不安障害では起こりません。他の恐怖症や不安障害の場合は逆に過換気が生じることで、失神しそうな感覚が生じますが、実際に気を失うことはほとんどありません。エレベーターのような狭い閉鎖空間が怖い場合には、高層ビルの上層階では働けないといった不都合が生じます。

 【治療】
特定の恐怖症は、恐怖感の対象や状況を避けることによって対処できます。治療が必要な場合は暴露療法を行います。心理療法士は治療が適切に行われていることを確認する助けとなりますが、心理療法士がいない場合でも暴露療法は実施できます。血液や針に対する恐怖症がある人にも、暴露療法で大きな効果がみられます。たとえば、採血時に失神してしまう人の場合は、針を血管に近づけ、心拍数が下がりはじめたら離します。これを繰り返し行うことにより、次第に正常な心拍数が保たれるようになり、やがては採血しても失神しないようになります。
特定の恐怖症に薬物療法はあまり効果がありません。ただし抗不安薬のベンゾジアゼピンは、飛行機に乗るのが怖いといった恐怖症を短期間だけコントロールするには有用です。
抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬、モノアミン酸化酵素阻害薬など)や抗不安薬は、社会恐怖の人にしばしば効果があります。多くの人が社交を円滑にしようと飲酒をしますが、結果的にアルコールの乱用や依存が始まってしまうことがあります。人前で何かを行うことへの苦痛から生じる心拍数の増加、ふるえ、発汗の軽減には、ベータ遮断薬(ベータ‐ブロッカー)が一般に用いられます。
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