Subject  : 心臓喘息(cardiac asthma)

カテゴリー: 健康・医療情報 > 


 心臓喘息(cardiac asthma)
 左心不全などによって肺うっ血が起こると、気管支喘息発作にきわめてよく似た喘鳴を伴う呼吸困難を認めることがあり、「心臓喘息(cardiac asthma)」と呼ばれています。
 肺うっ血とは肺静脈圧が上昇した状態をさし、左心不全の際に最もよくみられる病態です。左心不全は種々の心疾患の増悪時だけでなく、甲状腺機能亢進症、粘液水腫、末端肥大症などでもみられることがあります。また僧帽弁狭窄症、左房粘液腫、収縮性心膜炎などでは、左室機能の低下なしに肺うっ血が起こります。その他、重症の貧血、腎不全、過剰輸液でも肺うっ血をきたすことがあります。

 【心臓喘息と気管支喘息】
 肺うっ血が生じると、肺毛細血管から肺胞や末梢気道周囲の間質に向けて水分の漏出が起こり浮腫を形成します。それが進行すると肺水腫の状態となりますが、軽度の肺うっ血が長期間持続した場合にも、血管平滑筋の腫大、血管周囲や末梢気道の線維化などの形態的変化が起こります。さらに肺容量の低下、気道内分泌物の増加、気道収縮物質の活性化、肺内受容体の刺激による迷走神経反射などによって、気管支喘息の特徴とされる気道過敏性(種々の刺激に対して容易に気道の収縮が起こる状態)の亢進がもたらされ、気流制限による呼吸困難発作が出現し易くなります。
肺うっ血を起こす疾患は多岐にわたり、必ずしも明らかな心疾患や左心不全が存在するとは限らないため注意が必要です。発作の出現時期は気管支喘息の場合が夜半より明け方に多いのに対し、心臓喘息では就寝後2〜3時間に起こることが多いのが特徴ですが、日中も臥床していることの多い患者ではこの限りではありません。肺の聴診では、心臓喘息の場合には笛声音に加えて水泡音を聴取することが一般的ですが、全く水泡音が聴取されないこともあります。

 【診断】
心臓カテーテル検査にて左房圧(肺動脈楔入圧)の上昇を確認することが必要ですが、心臓超音波検査にて原因となる心疾患を認めたり、胸部X線写真にて左心不全や肺うっ血の所見(心陰影の拡大、肺門陰影の拡大、カーリーのBラインなど)が認められれば、心臓喘息の可能性が高いといえます。実際には、一般的な喘息発作の治療(β刺激薬の吸入、アミノフィリンとステロイド剤の点滴)に対して改善が乏しい場合や、高齢者や基礎疾患を持つ患者さんの場合は、 早めにこれらの検査を行うべきです。
 ⇒ 

[メニューへ戻る]  [HOMEへ戻る]  [前のページに戻る]