Subject  : 食中毒(Oー157)

カテゴリー: 健康・医療情報 


 食中毒(Oー157)
 <特徴>

感染力が非常に強く、5個の菌でも感染した例がある

 Oー157については、わかっていないことが多いのですが、 初期症状に気をつけて 適切な治療を受け、 二次感染を防ぐことによって、対処できる病気であることが わかっています。
食べ物を介して体内に入る点は、ほかの食中毒と同じですが、 他の病原体にない、 いくつかの特徴があります。
もっとも大きな特徴は、感染力が非常に強いことです。 実際にたった5個の菌から 感染した例も報告されています。 そのため、最近は食べ物からの感染だけでなく、 人から人へうつる、 二次感染の危険性が指摘されています。

<初期症状>

 腹痛と血便から始まり、血便が出るようになる

O−157は、他の菌と比べて、潜伏期間が長いのも一つの特徴です。
だいたい3〜9日、平均5日で、その間は無症状です。
発症して初期症状が現れるのはほんの1〜2日で、それ以降は急速に症状が激しく 悪化していきます。 ただし、無症状または軽症で治る人も半数以上います。
次に具体的な初期症状をあげてみましょう。

☆腹痛・下痢☆

 発症すると、主に「腹痛と下痢」が現れます。発熱はほとんどありませんが、 熱が出てもあまり高くなく、期間も短いのが特徴です。
また吐くこともありますが、ひどくはありません。
つまり、他の食中毒と見分けはつかず、最初からOー157だとはわかりません。
腹痛や下痢は最初の1〜2日に起こります。

☆血便☆

 ところが3日くらいすると、激しい腹痛へと変わっていきます。体をえびのように 折り曲げて 苦しむほど、激しい腹痛が起こり、下痢も1日に10回を超えるように なります。
また同時に、激しい下痢が続くなかで、次第に「血便」が出始めるようになります。
このときの血便は、まるで血液がそのまま流れ出ているような状態になります。
ほかの感染症の下痢便と比べて、明らかに異常なことがわかります。
このような状態は、「出血性大腸炎]と呼ばれ、Oー157に感染した人のうちの 約3〜6割がこの状態になるといわれています。
このとき、Oー157が放出する「ベロ毒素」によって、大腸の粘膜が痛めつけられられ、 「ただれや出血」が起こっています。
また、これによって、大腸の粘膜がむくんで腫れ上がり、 内腔が狭くなります。
菌の形状としては、普通の大腸菌とあまり変わりはありません。
しかし、Oー157は、「ベロ毒素」という強い毒素を放出するため、 人体に大きく 影響を及ぼします。
O−157に感染しても、健康な大人はあまり重症化しないのですが、 お年寄りや子どもが 感染すると、重症化しやすい傾向があります。
それだけに、初期に現れる症状がどんなものか知っておくことが非常に重要になるのです。

<進行すると・・・>

腎臓に障害を来したり、痙攣などの神経症状が現れる

血便が出ても、大半の患者さんは治療によって回復します。しかし、感染した人のおよそ 5%は、 さらに重症化し、「溶血性尿毒症症候群(HUS)」へと進行してしまいます。 HUSでは、出血性大腸炎のときに腸の中で放出されたベロ毒素が吸収されて、 血液中に入り、 血管の内側を傷つけるようになります。 これによって、次のような症状が現れます。

☆血小板の減少☆

ベロ毒素によって、血管の内膜表面にある内皮細胞が破壊されると、血液がスムーズに 流れにくくなり、固まりやすくなります。血液が固まって、「血栓」ができるときに、 血液中の血小板が血栓の中に取り込まれます。 そのため、血液中の血小板が少なくなってしまうのです。

☆尿量減少☆

腎臓は、細い血管がたくさん集まってできている臓器で、ほかの臓器よりも、 ベロ毒素の 障害を受けやすく、その働きが悪くなります。 主に、尿を作りにくくなって、全身が むくむようになります。

☆溶血性貧血☆

血管の内側がぎざぎざになるため、血液中の赤血球が傷つけられ壊れます。
赤血球が壊れることを「溶血」といい、これによって貧血が起こります(溶血性貧血)。

以上の症状は、決して軽いものではありませんが、早期の段階で、適切な処置を行えば、 回復させることができます。 また、腎臓の機能に障害がある場合には、通常の腎不全に対して行われる「透析療法」 を行います。 機能が衰えた腎臓の変わりに、透析器を使って血液を濾過し、老廃物を体外に 排出させるのです。 約1〜2週間の透析で、腎臓の機能は回復します。
また、溶血性貧血に対しては、輸血を行うことがありますが、血管の内皮細胞が再生すると、 溶血が止まり、正常な状態に回復します。減少した血小板の数も、同じように血管が元どおりに なって、 血栓ができなくなることで、正常な範囲に戻ります。

☆神経症状☆

もっとも重症なのは「神経症状」が見られる場合です。HUSまで進行した人の10〜20%に 起こります。ベロ毒素が体内を巡り、脳の血管あるいは神経細胞そのものを侵すようになると、 「頭痛」や「ぼんやりする」といった前駆症状が起こります。そして、突然全身に痙攣が起こり、 そのまま昏睡状態になることがあり、命にも関わる危険な状態に陥ります。

<診断>

初期の便検査によって診断でき、感染の拡大を防ぐことができる

Oー157は、重篤な状態になる前に、適切な診断を受けることが最も大切です。
診断の際、最も早く正確に判断する材料となるのは、「便」です。血液から調べる方法では、 発症後約1週間たって初めて診断がつきます。 便の「培養検査」を行えば、迅速に判定する ことができるのです。 この検査を行うことで、早期の段階で発生を確認し、原因を調べたり、 他に感染者がいないか、 または感染者の環境をチェックできるため、 二次感染の予防につながります。 ですから、下痢をしたときには、家族が便をとって、診察時に持っていくことをお勧めします。 ただし、Oー157は少数の菌でも感染するため、取り扱いには注意が必要です。
赤ちゃんなら紙おむつをそのまま、またトイレでとる場合も、すべてビニール袋に入れて処理し、 手で触った場所は完全に消毒し、手洗いも念入りに行います。 水洗トイレのレバー、ドアのノブ、蛇口などは必ず消毒しておくようにします。 殺菌作用のある台所用の漂白剤を利用してください。

<予防>

夏場に向けて、衛生面を徹底的に管理する心がまえを

Oー157は、真夏に発症することが多いと思いがちですが、実際には気温、 湿度とも 上がりはじめる初夏、5月頃から発生が見られます。
Oー157に関するこれまでの統計でも、最も多く発生しているのは7〜8月ですが、 5月と11月に発生した例も少なくありません。昨年は全国各地で発生しましたが、 日本国内でも、北に位置する北海道帯広市で、10月に集団発生した例もあるのです。

●手洗い励行

手洗いは必ずせっけんで行い、なるべくお湯で流すようにします。食品に触れる機会が なくても、 食前や用便後など、毎日の手洗いを習慣にしてください。

●中心温度を75℃で、1分の加熱を

Oー157は、75℃で1分加熱すれば死滅します。調理する際は、材料の中心温度が 75℃以上に なるようにし、必ず1分以上加熱しましょう。
また、調理後に菌がつき、繁殖することもあるので、調理したものはすぐに食べましょう。

●調理器具は使い分けを

菌は生肉についている可能性が高く、肉を切った包丁やまな板を、そのほかのなまで 食べるものに使うと、 感染するおそれがあります。
調理器具は、なま物用とそうでないもの用に分けて使い、また、使い終わったらそのつど 洗剤とお湯で よく洗い、まめに漂白も行います。市販の漂白剤にも十分な殺菌効果が あるので、 消毒液として家庭に常備しておくとよいでしょう。

●外食

体力が落ちているときは、外食してもなま物などを避けてください。また、感染に弱い 子どもや お年寄りもできるだけなま物は避けましょう。
親がなま物を食べても、 同じ箸で子どもに食べさせないように注意してください。

●入浴時にも注意を

下痢をしたときは、家族が同じお湯に入らないようにします。 シャワーなどで済ませる ようにして下さい。

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