Subject   : 蛍光顕微鏡

カテゴリー  : 学びの館 > 測定・分析 


 蛍光顕微鏡
蛍光顕微鏡とは、試料から発せられる蛍光を観察する顕微鏡のこと。試料の固有の自発蛍光を観察する場合の他、蛍光色素による染色を行った上で観察する場合、あるいは遺伝子組み換えにより蛍光性タンパク質を発現させる場合などがある。

通常の明視野顕微鏡と異なり、蛍光顕微鏡ではある特定の波長の光(励起光)だけを試料に照射する。試料が発する蛍光の波長は励起光のものとは異なるので、フィルタなどで蛍光のみを取り出すことができる。

光源としてよく用いられるのは高圧水銀ランプである。高圧水銀ランプが発する光は、いくつかの特定の波長の光が混ざったものである。これは水銀の放射スペクトルの波長で、254 nm、365 nm(紫外線)、405 nm(青色光)、546 nm(緑色光)などである。この光をフィルタやプリズムによって分割し、目的の波長の光だけを励起光として照射する。

光源の光を顕微鏡の鏡筒の途中(接眼レンズと対物レンズの間)から波長フィルタを兼ねたダイクロックミラー(dichroic mirror)で導入し、対物レンズを通して、試料の中の観察部だけに励起光を当て、同じ対物レンズを用いて蛍光を観察する落射式蛍光顕微鏡が一般的である。通常の明視野顕微鏡に蛍光顕微鏡用のオプション機器を取り付けることで蛍光顕微鏡として使える場合が多い。

得られる像は、暗い視野の中に蛍光を発する部分が光って見えるものであり、通常は迷光を防ぐため暗室で観察するか装置の一部が暗箱になっている。接眼レンズを通しての肉眼観察に加えて、1990年代以降はCCDカメラを用いた観察装置が一般化してきており、肉眼では観察不可能な微弱な蛍光を、冷却CCDなどの高感度CCDカメラを用いて可視化することも行われている。

CCDカメラを撮影に利用することのもう1つの利点は、コンピュータを用いた画像処理が容易になったことである。単に「画像のコントラストの強調が簡単になった」といった利点のみではなく、『複数画像を比較計算することにより、焦点面以外からの光を除く』といった処理も可能になった(Deconvolution)。

 ○ 全反射照明蛍光顕微鏡
蛍光顕微鏡の照明に全反射を利用する方法。光は屈折率の大きい媒質から屈折率の小さい媒質に、ある角度より大きな角度で入射すると、全反射が起こる。全反射の際には境界面に光のしみ出し(エバネッセント波)がある。プレパラートなどで、屈折率の大きいスライドガラスと、それより小さい水の境界面でもこれらの現象が起こるので、蛍光顕微鏡でガラス面で全反射になるような照明を用いると、ガラス面の近傍の試料のみ選択的に蛍光観察ができる。蛍光検出力は生体1分子をも達成し、一分子細胞生物学に貢献している。1990年代、日本で大きく発展した。
 ⇒ 探針をプローブとする分析技術

[メニューへ戻る]  [HOMEへ戻る]  [前のページに戻る]